第49回京都地域力ビジネス応援カフエ
「京都ちーびず応援カフェ in 京都市左京区」

 地域力ビジネス応援カフエが3月23日(木) 京都市左京区の「いとへんunivers」工房で開催されました。
いとへんuniversのメンバー、伝統工芸やちーびずに関心を持つ方、京都府職員に加え、ちーびず推進員、中小企業診断士が参加し、いとへんuniversが目指す西陣絣の普及、手工芸・伝統産業の活性化やちーびずの発展等について活発なディスカッションを行いました。

1.長友弘子京都府地域力ビジネス課長のあいさつ

 「ちーびず」は、儲けるビジネスではなく、いわゆるソーシャルビジネスで、人と人がつながり地域に何かを残していくものです。しかし、継続性を図るにはお金を回転させることも大切です。伝統産業の活性化には、府民発のアイディアによる応援が必要であり、特に現在の生活者にマッチしたデザイン性やセンスが重要でしょう。その意味で、いとへんuniversの活動は大変ユニークであり、その活動の発展が望まれます。本日の参加者による活発な討論の中で、更なる活動の発展を期待しています。



2.白須美紀いとへんunivers副代表の事業紹介と工房見学

 いとへんuniversは、西陣織の織り師、西陣絣職人、京都の文化を伝えるライター、染色作家、織物作家がメンバーで、2014年10月に発足しています。「つくること」と「伝えること」を両輪に活動しており、活動の目的は大きく以下の3点です。
(1)西陣絣をたくさんの人の手に届け、技術を次世代に伝える。
(2)手工芸(手織りもの、手染めもの)の良さを知ってもらい、糸を使った手仕事の楽しさ、喜びを伝え、活動のファンをつくる。
(3)職人が技術や情報、道具などを共有するためのベースとなる。
・西陣絣とは西陣織の一種で、先染めした経糸(たていと)をずらして様々に加工をすることで、模様を生み出す技法です。西陣絣は一時期、130軒、職人200名以上の規模でしたが、現在西陣に残っている絣職人は6名で、40代1名(当団体メンバー)以外は高齢の方です。西陣絣を次世代につなぐためには、魅力的な製品をつくり、広く世間に知っていただき、販売をしていかなければなりません。つくること、伝えること、販売すること、それぞれの分野で様々なアイデアを盛り込んで活動していきたいと思っています。
・西陣絣は人の手がないとできない技術ですし、手織りや手染めといった営みもまた、守り継いでいきたい工芸です。人の手でつくられるものには力があり、機械製品にはない魅力を放っています。当工房には手機が4台あり、織り師や織物作家が西陣絣をはじめとする手織ものを製織、自分たちで企画した機械織り白生地に染色作家がオリジナルの模様を染めた製品も制作しています。
 また、こうした工芸品に親しんでもらい製品を購入してもらう狙いもあり、染色ワークショップを、京都府の地域力ビジネス課よりサポートをいただき、2016年12月と2017年2月に、2回開催しました。そのほかにも、広く伝統工芸を知っていただくために、他のジャンルの伝統工芸品の担い手や外部で活動する方の協力を得て、今年2月に「京都女子職人工房ツアー」も開催しました。
・西陣では道具や知識、ノウハウなどが同業者の間で共有されていないのが現状です。これらを確保していくのは、今後ますます、ものづくりにおいて大事な要素となります。いとへんuniversでは、情報やネットワークを共有し、積極的にものづくりすることが可能になるよう業界全体をサポートすることも心がけており、織り手の紹介や、交流の場づくりなども行っています。
・製品の販売先
① ミュージアムショップやギャラリー、アパレルショップなどで委託販売
② イベントなどで工房に訪問された方に直接販売
③ メーカーより受注制作(4件進行中)
・いとへんunivers孫橋スタジオ(左京区川端御池)と「ショールームcafe」
 いとへんunivers孫橋スタジオは、工房としての役割とメンバーそれぞれの創作活動の拠点としての役割の両方を兼ねています。2016年12月から京都府地域力ビジネス課のサポートを受けて、スタジオ1階ショールームを、自由にお茶をし、くつろげる無料のカフェスペースとして週3回(木・土・日)オープンし、交流の場としながら、いとへんuniversや製品を知っていただくきっかけにつなげています。
 また、工房の設置に当たり、クラウドファンデイングを行い、多数の皆様の支援をいただきました。



3.交流と熱心なディスカッション

 今回の応援カフェは、いとへんuniversのメンバー2名(メンバーは全員本業を持っておられる)、手描き友禅技術などとネット販売ノウハウを活用して個別受注のオリジナル製品を制作・販売している工房の方や放送の司会等の仕事・イタリア料理のドルチェ製造をしておられる方、京都府職員3名、京都ちーびず推進員、中小企業診断士の計9名の参加でした。
 白須副代表のお話の後、全員でショールームに展示の西陣絣関連商品と作業現場の手織機を見学しました。西陣絣製品では着物生地の他に、独自開発のストールや服飾小物等もあり、多様な製品開発が感じられました。ストールは高級品ですが、工房ツアー参加者に好評とのことでした。手織機も和装用の40cm幅に加え、70cm幅のものもあり幅広い製品開発体制が考えられていました。工房見学の後、おまんじゅうとお茶等を楽しみ、お土産に西陣絣を利用したおしゃれなボタンとポストカードのセットをいただきました。
 ディスカッションでは、伝統産業の活性化について討論され、手描き友禅の個別受注のオリジナル製品を制作・販売している工房の方からは、最近家紋柄(戦国バージョンを含む)に注力し大きな反響を得ている事例が出され、現代の生活者ニーズにマッチした普段使いの製品開発を考えることの重要性が再認識されました。
 また、400年の伝統を持つ富山県高岡市の鋳物業界では床の間の置物等の銅鋳物が中心であったが、最近、素材を錫に転換し、そのやわかい性質を生かし購入者が自由に形を変えられる食器を開発し、海外も含め大ヒットしている事例も出され、素材や用途の革新も重要であることが指摘されました。京都府では着物のステキナ普段使いを推進する3部式のdricco(ドリッコ)kimonoのカフェを、来年度に8回開催する予定とのことです。
 いとへんuniversは、西陣絣技術の普及には、和装用途のみにこだわらず、素材についてもシルク以外にも取り組んでいくとのことで、また、他の伝統工芸品とのコラボも積極的に進めたいとのことであり、今後の活動の大いなる進展が期待されます。

西陣絣のボタンとポストカード

*いとへんuniversHP  http://itohen-univers.com/home




●平成29年4月10日掲載【文責】一般社団法人京都府中小企業診断協会 金田 修

【問い合わせ先】 京都府地域力ビジネス課(京都府ソーシャル・ビジネスセンター) 電話075-414-4865

 

京都ちーびず(京都地域力ビジネス)