(平成14年度マスターセンター事業)
 

 以下に掲載する文章は、平成14年9月に京都小売商業支援センターの協力を得て当社団法人中小企業診断協会京都支部が実施したアンケート調査と商店街、小売協同組合への訪問調査に基づいてまとめた「中小小売業のIT化に関する調査研究報告書」の提言部分を抜粋したものです。小売業を営まれる皆様の何らかの参考にしていただければ幸いです。

社団法人中小企業診断協会京都支部

 
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■中小小売業のIT化に向けて

1..中小小売業の課題とIT化の必要性

中小小売業を取り巻く環境は、年々厳しくなってきている。特に、長引く消費低迷は、中小小売業を直撃し、廃業・倒産に追いやられる店も年々増大してきている。このような状況下において、中小小売業としても生き残りをかけた取り組みが必要になってきているが、特別の秘策があるという訳ではない。まずは基本に立ち返って、今後の方向を考えていく必要がある。

小売業の基本といえば、言うまでもないことだが、売れる商品(顧客が求める商品)を仕入れ、販売することである。特に今日は、物余り状況にあり、ありきたりの物ではなかなか売れない。品質や価格、あるいはサービス面など差違のある特別の物がないと消費者の購買に結びついていかない。

従って、売れる商品をいかに見つけ、品揃えするかがとりわけ重要になってきている。また、消費者の二一ズや購買行動も多様化、個性化してきており、おおくくりの「顧客」ではなく「個客」への対応が求められている。すなわち、個々の消費者のニーズや購買行動をいかに掴むかが重要になってきている。更に、販売面においては、「便利さ」「スピード」などの付加サービスが要求されてきており、それらが購買店選定の重要な要素にもなってきている。

それでは、これらの課題にどう対応していくべきかなのか。第一に上げたいことは、やはり自店で何が売れているのか、誰が買ってくれているのかをできるだけデータとして掴むことである。現実のデータは、まさに顧客が何を求めているのかを知る手がかりであり、そこから商品の品揃えを考え販売促進策を検討していく必要がある。小規模店と言えども、もはや勘や経験だけでは立ち行かなくなってきていることをまずは認識する必要がある。第二に上げたいことは、顧客が求める商品を発掘するために、外部情報をできるだけ広く収集することである。自店だけのデータでは、消費者の二一ズの変化などが十分掴めないためである。インターネットは、日本全国あるいは世界の情報をいながらに掴め、中小小売業においても情報収集においては欠かせないものになってきていると言える。更に第三に上げたいことは、商品の仕入れや販売をできるだけ効率よく行う仕組みを作り上げることである。価格はもとよりスピードが重要視されてきている今日、店全体の効率的な運営が強く求められてきているからである。

以上、小売業の全般的な課題について述べたが、実は、これらの課題を解決することがまさにIT化の目的であることを言いたかったためである。IT革命に乗り遅れるなと喧伝される中で、あたかもコンピュータを入れることがIT化だと錯覚されている人もおられるが、それは全く本末転倒した考え方である。データの作成や晴報の収集は、コンピュータを用いなくても可能である。商品や顧客の状況が頭で覚えられる範囲であれば、敢えてコンピュータを導入する必要はない。しかし、コンピュータあるいはインターネットは、データ作成や惰報収集においては、きわめて効果的、効率的な道具である。IT化は、小売業の課題を解決するための、まさに手段であり、鉄砲が刀に勝ったように、これからの競争を勝ち抜くための武器なのである。

それでは、小売業のIT化にはどのようなものがあるのか。下の図表1は、小売業における主な課題とIT化の方向を業務別に整理したものである。

この図に示したように、小売業におけるIT化は様々な領域に及ぶが、IT化をどこまで進めるべきかは、店の規模によって自ずと違ってくる。例えば、POSシステムは、単品別に商品の売上データを即時に把握できる利点があるか、商品点数か少なく、顧客も限られている小規模店ではあまり有効であるとは言えない。そこで、第2節では、図表1で示したIT化の方向とアンケート調査結果を念頭に入れながら、従業員9人以下の小規模店と10人以上の中規模店に分けてIT化の方向を整理してみた。但し、小規模店、中規模店の区分は便宜上設定したもので、明解な境界がある訳ではない。一つの目安として参考にしていただければと思う。尚、大規模店については、既に様々な研究が進んでおり、今回の調査研究対象からは全く除外している。

ところで、中小小売業の場合、アンケート調査結果でも明らかになったが、IT化を進めるためには人的、資金的間題などいくつかのハードルがあるということである。その問題を解決する一つの方策が、中小小売店の連携(協力)によるIT化の促進である。連携の方法については、商店街、小売市場などの「地域的連携」、同業種協同組合などの「水平的連携」、メーカー、卸、小売が一体となった「垂直的連携」など様々なパターンがあるが、今回は、「地域的連携」と「水平的連携」おけるIT化の方向を第3節で整理している。

 図表1 小売業の課題とIT化の方向

区分
課題
IT化の方向
全般

・魅力ある店づくり
  売れる商品発掘
  「個客」へのサービス
・勘や経験に基づく店の経営からデータに基づく経営へ
・効率的な店舗運営、コスト削減

コンピューターによるデータの把握・分析
インターネットによる情報収集
ネットワークによる商取引の実施

販売管理

・効果的な販売促進策の立案
・宣伝コストの削減
・活気ある売り場づくり
  店舗レイアウト、商品陳列、POP等の工夫

・日別、部門別売上データの把握・分析
・販促企画別売り上げデータの把握・分析
・場所別売り上げデータの把握・分析

仕入管理

・ロスのないタイムリーな仕入
  欠品による機会ロスの削減
  売残りによる廃棄ロスの削減
・在庫の削減

・仕入・在庫・欠品・廃棄データの把握・分析
・EOS(補充発注システム)による仕入の省力化、スピード化

商品管理

・タイムリーな商品の入れ替え
  死に筋商品の排除、売れ筋商品の確保
・値付けの適正化

・POSシステム等の活用による商品別売上・粗利データの把握・分析
顧客管理

・顧客の囲い込み
・顧客(層)別販売促進策の立案

・ポイントカードシステム等による顧客データの収集・分析
情報管理 ・売れ筋商品、新商品情報の入手

・外部POSデータの活用
・インターネットの活用

経理給与

・業務作業の効率化
・計算ミスの排除

・経理、給与データのコンピューター化
・決済の自動化

その他 ・新しい販売スタイルの確立 ・インターネットによる宣伝・販売

 

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