第48回 京都地域力ビジネス応援カフェ
~京都ちーびず 『普段使いのちーびず製品』プロモーション~

 第48回の地域力ビジネス応援カフエが3月1日(水)ルビノ堀川で開催され、約120名の京都各地域からのちーびず実践者やちーびず推進員、京都府職員、中小企業診断士等が集まり、4名からのちーびず製品アピール・応援事業の紹介、32の展示ブースを構えた「普段使い」できるちーびず製品の試食や購入、12グループに分かれての意見交換などのプログラムでちーびずの輪の広がりや新たな気づきが生まれ、大いに賑わいました。

1.山田知事挨拶

 冒頭に山田京都府知事からの挨拶があり、ソーシャルビジネスの先駆けと言われるグラミン銀行(バングラディシュ)のムハマド・ユヌス氏と最近会話をした際、「若者にもっとソーシャルビジネスをに取り組んで欲しい」と話す同氏に、バングラディシュより平均年齢が20歳高い日本では、「若者だけでなく多くの方がソーシャルビジネスに取り組んでいる」と話したエピソードを交え、「地域にもとからある素晴らしいものを、皆さんのアイディアで、京都の未来を明るくする取組にして欲しい」とお話されました。

 また、山田知事はアピールの後にも再度登壇され各発表への講評をし、展示品の試食・購入タイムには、各ブースの話を興味深く聞いてちーびず製品を手に取られていました。



2.ちーびず製品のアピール

 最初に府庁女子ちーびず応援事業の紹介があり、今年度取り組まれた「ちーびず製品のプロモーションカタログ」の中から3つのちーびず製品と、応援事業として女子メンバーと地域団体が協働で取り組んだちーたびづくりについて、それぞれアピールがありました。
「府庁女子ちーびず応援事業」とは、様々な分野の府庁の女性職員たちが、府民発の様々なちーびず(地域力ビジネス)を担当業務を通じて応援することに取り組まれているもので、28年度は、メンバー全員でちーびず製品のプロモーションに取り組まれ、女性目線で「買いたくなる見せ方」を検討し、『普段使い』をキーワードに48品を選び、製品カタログを作成されたということです。

【気軽に着物を楽しむ!3部式のドリッコきもの】
 (NPO法人京小町踊り子隊 岩崎 裕美さん)

 京都をPRする振袖で踊る活動の中、踊り子の若い女性たちの意見から開発した気軽に着られる3部式の「ドリッコ着物」は、「簡単に着られる」「着姿が美しい」「お手入れも簡単」がポイントで、和装小物なしで慣れれば5分で着られるそうです。ドリッコきもののこだわりを、おはしょりベルト・巻きスカート・上着の3つのパーツを、順番に脱ぎながら解説する「解体ショー」や、ドリッコ着物を活用したまちおこしプロジェクトと着崩れにくさをPRする、舞鶴小町踊り子隊による踊りの披露もあり、ひと際華やかなプレゼンテーションでした。
【災害に役立つ!マルチポンチョ】
 ((株)カスタネット 植木 力さん)

 被災地の声から生まれた、軽くて持ち運びにも便利な「マルチポンチョ」は、野外でのトイレや着替えの時の目隠し、雨や防寒対策など、普段の生活やアウトドアのシーンでも役立つことをきちんとPRしたことを契機に、各方面から注目されるようになったそうです。普段も使えて持ち運べるものでなければ、真の「防災グッズ」とは言えないという気づきから生まれた、マルチポンチョと携帯トイレなど必要最小限の防災グッズ7点を詰め込んだ「携帯ポーチ」は各方面で注目されているそうです。
【丹後ちりめん美人!ボディタオル】
 (ちーびず推進員 蒲田 充弘さん)

 「ちりめんが売れない」という地元企業の相談がきっかけとなり誕生した、丹後ちりめんのボディタオル「ちりめん美人」は、地元の様々な方と丹後ちりめんを普段づかいするアイディアを出し合い、"絹を水につける"という新しい発想を取り入れたことで、地元でも話題の人気商品となったそうです。府庁女子ちーびず応援チームのメンバーの中でも、"お肌がツルツルになる"と人気№1だったということです。
【環境保全の大切さを伝える"ちーたび"に挑戦! 】
 (府庁女子ちーびず応援チーム・環境管理課)

 ボランティアで行われがちな、環境保全の啓発イベントを、地元ガイドとの交流まちあるき「ちーたび」という形で取り組むことに、亀岡のNPO法人と環境管理課の女性職員が協働でチャレンジされ、地元ガイドのお話や交流会、収穫体験などの楽しい催しを交えながら、子供にも楽しみながら環境保全の大切さを伝えることができる取り組みとなったそうです。



3.グループ意見交換会レポート

 グループごとの意見交換会では、「楽しいストーリー、元気な人たちのちーびずを出し合おう!」というテーマで各班ごとに活発な意見交換が交わされました。以下は中小企業診断士が参加した各班での意見交換の要旨を紹介します
【1班】
 1班の参加者は、普段使いのち-びず製品として「丹後の食材(野菜・果物・魚介類等)」で新しい商品を企画・販売しているビオ・ラビットや由良の新たな特産物としてオリーブを栽培・新製品開発も行っている由良のオリーブを育てる会、抹茶の海外展開を目指しているmatcha lab、「食の京もの(新しい逸品)」の開発を進める(株)京乃晴れ姿、京都発インドネシア調味料サンバルの開発者に加え、美山町でコミュニティカフェを運営しているコミュニティカフェすずらん、認知症の方も対象としてコミュニティカフェ等を計画しているNPO法人つながるKYOTOプロジェクトなど多彩なメンバーで、活発な討議がなされました。
 交流会の中で、今回のテーマに沿った多様な意見が出されました。概略は以下のとおりです。
 ①和束町の中井製茶場は、長年有機栽培を行いそれが評価され海外にも販売している。事例発表にもあった「丹後ちりめん美人」は1年で1,700枚の販売実績を達成しているが、それにはコーディネーターとしてのちーびず推進員の大きな貢献があった。宇治市は認知症の方にやさしい町を標榜しているが、それには洛南病院の医師の方の活躍がある。
 このように地域で先駆的に活動している元気な人との交流を通じて、普段使いのちーびず製品のプロモーションを研究・実践していくことが必要である。
 ② 由良のオリーブを育てる会では、オリーブの実の摘み取り・しぼりの体験と地域でのジビエ料理等を味わいなどをセットしたちーたびにより、地域の活性化を検討している。ちーびずによって地域全体を活性化するという活動によってこそ、普段使いのちーびず製品のプロモーションが大きな成果を得る。
 ③ 普段使いのちーびず製品のプロモーションとして、コラボレーションが重要である。
 例えば、新しいインドネシア調味料サンバルの売り込みなどについても、調味料単体しての販促よりも、何かの商品ととコラボして、新しい味わいを提案することが考えられる。
  <文責 一般社団法人京都府中小企業診断協会 金田 修>
【2班】
 2班では、参加メンバーの中で「ちーびず」を考えました。メンバーの取り組んでいる「ちーびず」はどのように生まれて、他の人たちに伝えられて、商品やサービスになってきたのかを話し合いました。
 具体的には、アロマエキスの新たな商品は、使用後の捨てられる水尾のゆずや枝打ちされた北山杉からエキスを取り出す。有名な産地の名称を使い、京都ブランドの特産品を生み出し、生産者に喜んでもらい、環境やエコにもつながる取組となりました。
 また、藍染織物を始める取組は、困っておられる地元農家の耕作放棄地を活用して、藍を育てて糸を染めて、織物を織ります。そこで藍苗植え付けや収穫体験をしてもらい、さらに染・織物体験ができる「ちーたび」を計画しています。
 「ちーびず」のポイントは、身近なところにアイデアや材料はあり、それは地域の困りごとから生まれるというところです。そして賛同者を集めて、その困りごとを解決する方法を自分たちで考えます。その活動を通して、知恵や工夫を捜し、また協力者やコラボレーションへとつなげていくことが大事です。
  <文責 一般社団法人京都府中小企業診断協会 久保 憲司>
【3班】
 3班では、グループ内に舞鶴小町踊り子隊、京すだれ(亀岡)や桑の葉茶(京丹後)、化粧道具(西陣)の製造者、レンタルスペース(木津川)提供者などがおられ、それぞれの団体とどのような連携や協働、コラボレーションが考えられるかという視点で活発な意見交換がされました。
 1.「場づくり」の必要性
 まずは、自由な発想でいろんなアイデアが出せる場所や、自分たちの取り組みを知ってもらえる場が必要であり、まずはこのような「場づくり」を行い、単発的ではなく継続して情報の発信や意見交換を行うことが大切であるとの意見が出ました。
 アイデアを考える切り口としては、地域、商品・サービス、ターゲットなどから、団体同士の共通項を見つけだすことがポイントであるということを皆で共有したうえで、次のようなアイデアが出されました。
 2.マーケティングの視点を持つ
 共通項としては、①地域:京丹後、木津川等 ②商品・サービス:お茶、布、美容・健康、③ターゲット:女性 等が考えられましたが、具体化に当たっては、「誰に」「何を」「どこで」「どのように」「いくらで」「誰と」など、マーケティングの視点を持って検討を進めました。
 3. コラボ例
 時間の関係もあり具体的な話までには発展しませんでしたが、最終的にコラボ例として、「若い女性をターゲットとして、簡単に美しくメイクができる化粧道具でお化粧をして、自分で簡単に着ることができるドリッコ着物できれいに着飾り、京すだれのあるカフェで、美容に良いとされる桑の葉茶をおいしくいただくことで、それぞれのちーびずを知ってもらうとともに、身も心も美しくなってもらおう」という提案が出されました。
  <文責 一般社団法人京都府中小企業診断協会  梅林 守>
【5班】
 5班では、「dricco(ドリッコ)きもの」を普及させるための提案が主な議題となりました。
 挑戦してみたいけれど、難しそうで敷居が高いと思われている和装着物ですが、この商品は3部式になっており、洋服感覚で一人でも簡単に着脱できて、着崩れしにくい、中でもポリ製品は丸洗い可能という、大きな特長があります。
 まず認知度の向上策から議論を始めました。現状では決して認知度が高いとは言えず、当日会場でも披露されたような踊り子隊のパフォーマンスが大きな役目を担っていますが、舞台用衣装は演出上、色・柄とも派手めのものが多く、その商品自体が実際の購入に結びつくことが少ないのが悩みです。とはいえ、各地で結成されている踊り子隊メンバーは、10代から70代までと幅広く、各世代に訴求できる強みがあります。
 さらには、着やすい・脱ぎやすい、軽いというのは踊り子さん自身も自覚されており、特に大きな動きをしても着崩れしないという特長は、踊りの実演を通じてアピールできることから、今後も地道に努力を続けていくべきという結論になりました。
 次に、実際の普及、販売促進については、ほとんどの女性は和装に興味があり、着てみたいとの意見が多く、子供のいる主婦層を考えた場合、最小100cm~の子供用レンタル着物もあることから、例えば「親子で着物を着よう」キャンペーンで写真撮影会を開催するなど、子育て支援の観点も絡めて、対象層の需要を喚起していくというアイデアも出され、大いに盛り上がりました。
 本日の議論のテーマは着物が中心となりましたが、認知度の向上策を始め、実際の販売に結びつけるためのステップなど、各参加者自身の活動もに活用できるヒントを多く得られたのではないかと思います。
  <文責 一般社団法人京都府中小企業診断協会 藤村 正>
【6班】
 6班は、地域おこしや子どもに関わる活動をされている方が多く、各々の自己紹介や活動についての話の中から「体験が大切」という共通項が出てきました。
 例えば、由良のオリーブであれば、できた商品の認知度を高めることは当然必要だが、それ以前の、生産の過程にお客さんを巻き込むこと、オリーブの栽培や収穫などの過程に関わることで、「由良オリーブ」の地域での認知度が高まり、口コミや愛着も生まれてくるのではないかということが提案されました。実際に美山では農村留学を10年以上前から延べ120人以上を受け入れているということで、小学生時代を美山で過ごした子供が、美山に愛着を持って戻ってきたり、地域の外で美山のことを話してくれているということです。共感者を生み出すためには、商品や出来たものをプロモーションするだけでなく、それ以前から共感者をつくっていく取組が大切だということが改めて認識されました。
 また、それぞれの地域で、いろいろな体験イベントを企画しているけど、「情報が知られていない」「情報の広がりをもっとつくっていくにはどうすればいいか」「ポータルサイトがあったら」ということで議論が進みました。そんな時に京都府女子チームの方から京都府の「子育て応援パスポート」のWEBサイトをもっと活用できるのではないかという現実的にすぐに実行可能な提案もされました。さらに、地域で活動する中でぶつかるよくある専門的な課題に対する勉強会や、成功事例などを共有してもらえるような支援があれば嬉しいという意見も上がりました。
 行政や支援者側と、地域で実際にちーびずを推進している方と共に考えることで生まれる新しい取り組みもあることを改めて認識し、これらの議論を活かして具体的に進めていくことでますますちーびずの広がりが進むことが期待できます。行政と地域間連携での相乗効果を感じたグループ意見交換会となりました。
  <文責 一般社団法人京都府中小企業診断協会 阪本 純子>
【8班】
 8班では参加者が各々の活動を紹介し合いながら、その活動を通じて感じていることを共有し合いました。強く感じている課題は「継続」です。若い人たちに繋げていきたい・・・そのためには「ボランティアでは難しい。ある程度の収益が必要になってくる。」「知名度アップが重要だ。そのためには、今回のような交流会を通じて情報を交換し合い共有することが重要ではないか」などの意見があがりました。また、「自分たちの活動を効果的にPRするには動画配信が効果的なのではないか」という意見も出ました。「特に綺麗なシーンを撮る必要はなく、飾り立てずにありのままの姿を撮る。視聴者側には自分たちが持っていたイメージとのギャップが生まれ、それが面白味を増す」自らの体験を交えての意見に、他の参加者も共感されたようです。自分たちの活動に動画をどう効果的に組み込むか・・・そんな想いをめぐらしているようでした。
 人との「出会い」や「つながり」を通じて新たなアイデアや活動が生まれていく・・・今回のような交流を通して更に活動が活性化することが期待されます。
  <文責 一般社団法人京都府中小企業診断協会 鬼頭 靖彦>
【9班】
 9班では放置竹林の有効活用や海のごみとなっている牡蠣の有効利活用などの環境保全の社会的課題解決、廃校の写真展イベントなどで地域活性化、綿花から糸を紡ぐ活動を通じて高齢者の居場所づくりなど、ちーびずの実践者と行政の立場からの支援する参加者など様々な立場の方が参加していました。
 ちーびずで地域を元気にするというテーマで各自の実践しているちーびず同士がコラボできないか、という話で意気投合した参加者もあれば、ビジネスとしての継続のために売れる商品づくりをどのように地域を巻き込む形で行うか、という事例の紹介などもあり、議論が盛り上がりました。参加メンバーだけでも地域の「食」や塗りの「器」、糸紡ぎの「体験」などさまざまな分野のちーびずがあるのでそれらをパッケージで体験できる場を提供することでより効果的な発信につなげることができるというアイデアがあり、停泊中の舞鶴港の船など、より効果的な場所で実施できるよう行政も巻き込んだ戦略が重要という意見でまとまりました。
 共通するのは、良いものはあるがそれをうまく伝えられていないというところに課題がある、という課題認識であり、その点に沿った実のある議論がなされてそれぞれの前向きな思考につながったと感じました。
  <文責 一般社団法人京都府中小企業診断協会 松下 晶>
【10班】
 10班は、冒頭にみなさんのちょっと困っていることを聞きました。由良オリーブを育てる会の方から、雪でオリーブの枝が折れてしまい、オリーブの葉を大量に採らざるを得なくなったのでオリーブティーのティーバッグを大量に作りたい。そのためにティーバッグを安く仕入れられる業者を探しているという話がありました。それに対し、お茶の伊都幸の方やちーびず支援員から業者の情報をご提供いただきました。こういったちょっとした困りごとが解決してしまう場としてもちーびず応援カフェでのつながりが役に立つのだなと実感した次第です。
 10班の共通の話題としては、それぞれの団体の活動を継続する後継者がいないということでした。団体の後継者を育てるには、まずは活動に興味を持ってもらわないといけません。ちーたびは、団体の活動を直に見ていただくことができるので、団体の活動を紹介し、後継者を育てるきっかけとなる手法として有効であると参加者のみなさんが納得しました。
 ちーたびの企画としては、宇治茶の製法を紹介して宇治茶づくりの魅力を直に体感していただくちーたび、大原野でみそづくりを体験してみそづくりを楽しんでいただくちーたび、という意見が出ました。
 ちーびず応援カフェに参加することによって、人と人とのつながりが点から線へ、線から面となり、それが団体の活動を活性化することにつながります。今回のちーびず応援カフェで京都のちーびずがますます活性化することを筆者は確信した次第です。
  <文責 一般社団法人京都府中小企業診断協会 小松﨑 哲史>
【11班】
 11班として、以下のデイスカッションがありました。
 事例としては、大原野加工食品友の会の地域で「みそ作り」の話がチーム内での参考になりました。
 ちーびず企画の練り方について
 ・冒頭の4事例の発表で説明された、
  ① 他地域、他業界の人の違う視点の意見を取り入れる。
  ② 製品・商品に新たな付加価値を付加する。
  ③ 困りごとの解決と言う視点を入れる。
 と言うことに加えて、
  ④ STORY性を付加して、ブランド価値を上げる。
  ⑤ 逆に購入・サービス利用のハードルを上げて「もったいつける」(これもしっかりとしたブランドがあることが前提)
 などの手法があるのではないかとの意見が出ました。
 ②に関しては付加価値を生み出す方法として歴史・旅・健康志向などを付加するのは発展性があるという意見が出ました。
 売る時のパッケージは重要であり、地域内のプロに頼む方が良い等の意見がありました。
 地域の高齢化があり、若手への継承が難しい、若い人は地域の活動している余分な時間がない等の意見がありました。
 逆に高齢者に対しては十分に生きがいになっているとの意見がありました。
 地域のちーびず関係者からは、フアンがある程度までの人数に達すると、そこからの発展が難しいとの意見がありました。
  <文責 一般社団法人京都府中小企業診断協会 西河 豊>




●平成29年3月30日掲載【全体文責】一般社団法人京都府中小企業診断協会 松下 晶

【問い合わせ先】 京都府地域力ビジネス課(京都府ソーシャル・ビジネスセンター) 電話075-414-4865

 

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