京の起業家 No.30

株式会社カラーループ

 京都商工会議所よりご紹介をいただき、2019年に株式会社カラーループを設立された内丸もと子様にお話を伺いました。

株式会社カラーループ 代表取締役 内丸もと子様
テキスタイルデザイナー
カラーコーディネーター 1級
博士(工学)
<受賞歴>
2013年 第18回「リサイクル技術開発本多賞」(一社)産業環境管理協会 
2019年 繊維学術賞 衣笠繊維研究所
2020年 LED関西 ファイナリスト APT Women 第5期採択
2021年 京都女性起業家賞
・廃棄繊維を色材・強化材として使用したペンケース、ブックカバー等
・雑多な繊維からの糸(廃棄衣料50%+生成り綿糸50%)
・故繊維の現場(大阪泉州故繊維協同組合)


事業の概要と、開業の経緯を教えてください。

古繊維の現場(大阪泉州故繊維協同組合)
 廃棄繊維は年間200万トンもある一方でリサイクル率が4分の1と非常に低く、またリサイクル品も産業用や防災用品など付加価値を出しにくい分野にとどまっており、活用促進につながりにくいという課題があります。
 開業の経緯は、2011年から京都工芸繊維大学の博士課程にて繊維リサイクルの研究をしている中で、私のテキスタイルデザイナーとしての知見を活かして素材分別が難しい廃棄繊維を「色」で分別することに着眼しました。廃棄繊維の色味をそのまま生かした深い色合い、独特な素材感のFRP(繊維強化プラスチック)として商品化、またフェルトや糸などの素材開発も行なっています。研究の中で発足した共同開発チーム「カラーリサイクルネットワーク」が現在の事業の母体となっており、今でも当社の提携先として開発、試作を担っていただいています。
 廃棄品をより魅力的な素材として再利用することを「アップサイクル」と言い、当社では廃棄される服飾を再利用可能な素材にして商品化する技術の提供や、自社オリジナルの文具や雑貨などのアップサイクル品を製造・販売しています。例えばアパレルブランドの株式会社アーバンリサーチ様では同社のデッドストック繊維をアップサイクルした「commpost(コンポスト)」というブランドを展開しています。
 ※右写真:古繊維の現場(大阪泉州故繊維協同組合)

京都商工会議所からはどのような支援を受けましたか。


 2019年の夏に創業塾を受講し、その学びをもとにすぐに法人を設立し、創業しました。塾終了後も経営支援員さんには何かと気にかけていただき、金融機関や協業を検討している大企業などの前でプレゼンテーションする京商イブニングピッチと知恵産業オープンイノベーションピッチに登壇させていただき、そのご縁で様々な企業様との提携企画や別の起業家向けコミュニティへの参画につながるなど、事業の推進に多大な支援を頂戴しております。
 ※右写真:廃棄繊維を色材・強化材として使用したペンケース、ブックカバー等

コロナ禍の影響について聞かせてください。


 当社の提携先であるアパレル業界などは需要が減少し、業績不振で大変に厳しい状況です。そうした苦境の中で、当社の素材を活用して新しい付加価値をつけた事業展開を検討されている企業様からの試作品の相談など、引き合いが増えています。
SDGsを意識した経営に注目が集まる中、2021年はNHK「ルソンの壺」や関西テレビ「報道ランナー」、官邸SNS「JAPAN GOV」など様々なメディアで取り上げていただき、当社の技術や事業にかかる期待が大きくなっているのを感じています。

起業からご苦労されたことは何でしょうか。


 引き合いから商品化までの期間が長いことですね。ある大手メーカーの新商品が秋頃に発表になりますが、最初の相談から2年かかりました。試作、営業、組織の維持運営等にかかるコストを賄うための資金調達に奔走し、日本政策金融公庫と京都信用金庫から融資していただくなど、関係各所にお世話になっています。

今後の展望は?


 京都工芸繊維大学のD-labと昨年から共同研究を行っており、10月に東京で成果発表も兼ねた展示会があります。留学生はじめ国際色の豊かなチームで、ユニークなアイデアも出ました。また、香港在住の日本人デザイナーの紹介で香港ブランドが当社の素材を活用する動きもあり、今後は海外でも当社の取組を広げていきたいと思います。
 また、未来構想ではありますが、繊維リサイクルの回収、素材化、製品化を一貫して対応できるプラットフォームプラントができればと考えています。また、商品提案やプロジェクトマネジメントができる人材を雇用して次世代に引き継ぐことも必要と考えています。
 ※右写真:雑多な繊維からの糸(廃棄衣料50%+生成り綿糸50%)

最後にこれから起業される方へのメッセージをいただけますでしょうか?


 「やってみないと、わからない!」ので、迷っているならぜひやってみてください。私も勇気を出して試行錯誤する中で、たくさんの力を貸してもらいました。挑戦した方が、振り返って「面白かった」と思えるのではと思います。
(取材 松下 晶)

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【京都商工会議所 経営支援員 谷口氏より】
 廃棄繊維を「素材」ではなく「色」で分別する着眼点に加え、人との出会いを大切にされていることが多くの引き合いにつながっていると思います。創業塾、専門相談、特定創業支援事業、補助金申請、ピッチ登壇など、京商の様々な支援メニューを事業ステージごとに上手に活用し、一歩ずつ着実に成長されています。多くのスタートアップと同様にマネタイズに苦労されていますが、SDGsも追い風に今後のさらなる発展を応援しています。

法人概要

 ■株式会社カラーループ
  https://www.colourloop.net/ (※秋にリニューアル予定)
  〒600-8413 京都市下京区烏丸通仏光寺下る大政所町680-1 第八長谷ビル 2F-222

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